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判例解説・東京高決令和元年5月27日(買収防衛策の廃止に係る株主提案の可否)

こんにちは、コポローです。

「最近の会社法関係の重要判例について、学習者向けに要点を分かりやすく解説する」記事を連載しています。

最近の予備試験や司法試験では、裁判例を題材(元ネタ)の一部とした出題が散見されます。

そこで、重要判例解説や商事法務掲載の解説などを参考に、各種試験との関係で重要な裁判例をピックアップし、要点を分かりやすく解説していきたいと思います。

「最近の判例」の基準としては、会社法判例百選第3版に掲載されていない判例を念頭においています。

   

 

第12回となる今回の判例は、東京高決令和元年5月27日定款の定めに基づき株主総会決議を経て導入された事前警告型の買収防衛策の廃止について、株主提案権の対象とならないとした裁判例)です。

これまで裁判例がなかった問題について重要な判断を示した判例で、評釈類も多数出ており、注目度は高いです(おすすめの評釈を本記事の末尾に掲載しています)。 

 

(事案の概要)

東証一部上場会社であるY社の定款(以下「本件定款」という)15条1項は「株主総会においては、法令又は本定款に別段の定めのある事項を決議するほか、当会社の株式等の大規模買付行為への対応方針を決議することができる。」と定めている。

・Y社では、平成30年6月の定時株主総会において、Y社株式等の大規模買付行為に関する対応方針(いわゆる事前警告型買収防衛策。以下「本対応指針」という)の継続を承認する決議がされている。本対応方針の有効期間は3年とされていた。

・Xは株主提案権の株式保有要件を充たす株主であり、平成31年4月9日、Y社に対して、会社法303条2項および305条1項に基づき、令和元年6月17日開催予定の定時株主総会(以下「本件株主総会」という)において、本件対応指針の廃止の件(以下「本件議題」という)に係る株主提案を行った。

その上で、Xは、Y社に対して、本件株主総会に関し、本件議題に係る議題提案権および議案要領通知請求権(以下「本件議題提案権等」という)を被保全権利として、本件株主総会の招集通知および株主総会参考書類に本件議題ならびに本件議題に係る議案の要領および提案の理由の全文を記載することを命じる旨の仮処分を申し立てた。

 

(判旨)

(ⅰ)「会社法303条2項は、株主は『一定の事項』を株主総会の目的とすることを請求することができると規定しているところ、この議題提案権は、一定の事項を株主総会の目的とすることを請求する権利である以上、その対象となる一定の事項は、株主総会の権限の範囲に属する事項に限られ、提案された議題が株主総会の決議事項でないときは、当該会社は、それを株主総会の議題とする必要はない」「したがって、……本対応方針の廃止が株主総会の権限に属する事項であるというためには、本対応方針の廃止が、Y社の定款(本件定款)において、株主総会で決議すべき事項と定められている必要がある。」

 

(ⅱ)「本対応方針は、本件定款15条1項の『当会社の株式等……の大規模買付行為への対応方針』に当たるものと解するのが相当である。」しかし、「会社法は、取締役会設置会社について、業務執行の決定は、取締役会又は取締役会の委任を受けた業務執行取締役若しくは執行役の職務権限に属するものと定められ〔ママ〕ており……、取締役会設置会社において、業務執行の決定を株主総会決議事項とする旨の定款の定めは経営を担う取締役会の判断権限を例外的に制約するものであることからすると、その範囲は厳格に解するのが相当である……。そして、本対応方針のような事前警告型買収防衛策の導入は、その性質上、取締役会において決定することができるものであり、現に、株主総会の決議なしに、あるいは、定款に全く規定がないままにされた株主総会決議を踏まえ、取締役会の決定でその導入を決定している株式会社も存在する……。また、本対応方針は敵対的な買収に対する防衛策であり、その導入についてはともかく、その廃止については株主総会の決議に係らしめないこと自体は合理性があるし、一方で、……本対応方針は……3年の経過によってその効力を失うものとされていたことからすると、その廃止については本件定款15条1項の決議事項とはされていないと解することにも相応の合理性がある。さらに、買収防衛策について株主総会で決議することができる旨の定款の定めをしている株式会社の中には、買収防衛策の廃止が決議の対象となると定款に明記しているものがあるところ……、本件定款15条1項では、買収防衛策の廃止ができることが明記されていない……。その他、本対応方針では、取締役会において本対応方針を廃止する旨の決議が行われた場合にも、本対応方針は廃止されるものとされており、本対応方針の廃止については株主総会の排他的決議事項ではないことが明らかである。こうしたことからすると、本件定款15条1項において株主総会で決議することができるとされている『当会社の株式等……の大規模買付行為への対応方針』には、その廃止は含まれていないものと解するのが相当である……。そうすると、本件議題である本対応方針の廃止は、本件定款においてY社の株主総会で決議すべき事項と定められたものではなく、Y社の株主総会の権限の範囲に属する事項に含まれないから、Xが株主総会の議題として提案することができるものではなく、Xによる本件議題提案権等は認められない

 

(ⅲ)仮に、本件定款15条1項の内容に本対応方針の「廃止」が含まれるとしても、「本件定款15条1項は、本対応方針の導入等を決定する権限を株主総会に付与するために設けられた規定ではなく、取締役会が本対応方針を導入するに当たって、株主総会において株主の意思を確認すべきものと考えたところ、このような意思確認を定款の定めのないままに行った株主総会の決議の有効性に疑義があることに配慮し、これを有効に行うことができるようにするために設けられた規定であるというべきであって、株主総会に本対応方針の導入等についての権限を付与するものではないものと解するのが相当である」。

 

(ⅳ)また、仮に、「Y社の株主総会が、本件定款15条1項により、本対応方針のような事前警告型買収防衛策の導入等を決定する権限を有しているとしても、……これは株主総会の専属的権限ではないと解されるところ、本対応方針のような事前警告型買収防衛策の導入等自体は、その性質上、取締役会において決定することができるものであること、Y社のような取締役会設置会社において、一定の事項について株主提案権の対象とすることは、会社における機動的な経営判断を取締役会に委ねた会社法の基本的な考え方を修正し、その権限を制約することになるものであるから、その範囲は厳格に解釈すべきであること……、Y社の株主としては、定款変更のほか、取締役の解任等の議案を提案することにより、本対応方針の廃止等を実現することが可能であること……、……本件定款15条1項の規定上も、『当会社の株式等……の大規模買付行為への対応方針』については、『法令又は本定款に別段の定めのある事項』とは格別に規定されていること、その他、買収防衛策の導入、継続、変更、廃止は極めて高度な経営上の裁量事項であり、しかも、本対応方針は敵対的な買収に対する防衛策であり、その導入についてはともかく、特にその廃止について株主総会の決議に委ねないということ自体は合理性があるし、その一方で、本対応方針は3年の経過によって効力を失うものとされているのであるから、株主提案の対象にならないものとする合理性があることからすると、本件定款15条1項は、株主総会の専属的権限とは解されない事前警告型買収防衛策である本対応方針の導入等について、これを株主総会に提案するか否かの判断権限を取締役会に留保しているものと解するのが相当であり、株主にその議題を提案する権限は認められないものと解するのが相当である……。そうすると、Y社の株主総会が、本件定款15条1項により、本対応方針のような事前警告型買収防衛策の導入等を決定する権限を有しているとしても、Xは、本対応方針を廃止する旨の本件議題の提案等をする本件議題提案権等を有していないということになる。

 

 

(解説)

判例は、やたら長く、傍論に傍論が重ねられており、分かりにくいです。

判例の要約と解説は以下のとおりです。

 

 決定要旨(ⅰ)は、株主提案権の対象となるのは株主総会の権限に属する事項に限られるとする。この理解によれば、いわゆる勧告的決議に係る提案は株主提案権の対象外となる。決定要旨(ⅰ)は、学説の一般的な見解に合致し、評釈類においても異論はない。

 

 決定要旨(ⅱ)は、本対応方針の廃止は本件定款15条1項の定める株主総会の決議事項ではなく、Xに本件議題提案権等はないとする。その主な理由は、①取締役会設置会社において、業務執行の決定を株主総会決議事項とする旨の定款の定めは厳格に解すべきこと、②買収防衛策の廃止は株主総会の決議に係らしめないことに合理性があること、③本対応方針の有効期限は3年であるから、その廃止について株主総会決議事項としないことに合理性があること、④本件定款15条1項は本対応方針の廃止について明文で定めていないこと、⑤本対応方針の廃止は取締役会決議によっても可能であり、株主総会の排他的決議事項ではないことである

しかし、これらはいずれも十分な理由とはいい難く(北村・伊藤)、むしろ⑤によれば、Xの議題提案権等は肯定されるべきであるとの批判がある(北村・弥永)。①の論拠は、射程が広く、その影響が広範に及びうることから重要であるが、自明とはいえないとの批判がある(伊藤・弥永)。

 

 決定要旨(ⅲ)は、傍論として、本件定款15条1項の内容に本対応方針の「廃止」が含まれるとしても、本件定款規定は勧告的決議ができることを明確化したにすぎず、株主総会に決定権限を与える趣旨ではないとする。決定要旨(ⅲ)についても、その論理構成等に対して、批判が少なくなく、勧告的決議であっても定款の規定に基づいてなされるものは株主提案権の対象とされるべきであるとの指摘がある(伊藤・久保田)。

 

 決定要旨(ⅳ)は、さらなる傍論として、仮に本件定款規定が株主総会に権限を付与するものであるとしても、株主総会は取締役会から付議された場合にのみ決議を行うことができるという制限された権限を有するにすぎず、株主提案権の対象にはならないとの解釈を示す。

決定要旨(ⅳ)の挙げる論拠は、決定要旨(ⅱ)とほぼ同様のものであるが、ここでも十分な論拠といえるか疑問がある(伊藤・久保田)。とりわけ、買収防衛策に関しては、株主総会の権限を弱めるような解釈をすべきではないとして、決定要旨(ⅳ)に対しても批判が多い(松元・久保田・志谷)。

 

以上のように、決定要旨(ⅱ)~(ⅳ)には学説からの批判が強いので、安易に本判例の立場を答案等で踏襲すべきではないでしょう。

 

判例と学説の対立の背景には、株主提案権制度の趣旨や買収防衛策への評価の違いがあると言えます。

 

(参考文献)

久保田安彦「本件判批」法学研究93巻8号(2020)

北村雅史「本件判批」法教471号(2019)141頁

伊藤雄司「本件判批」税務事例52巻2号(2020)

弥永真生「本件判批」ジュリ1539号(2019)3頁

松元暢子「本件判批」ジュリ1545号(2020)

志谷匡史「本件判批」ジュリ1544号(令和元年度重要判例解説)95頁

 

 

今回の記事は以上です。

少しでもみなさんの参考になれば幸いです!!

それではまた!!!

  

 

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