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判例解説・東京高判令和元年10月17日(株主総会の諸問題・アドバネクス事件)

こんにちは、コポローです。

「最近の会社法関係の重要判例について、学習者向けに要点を分かりやすく解説する」記事を連載しています。

最近の予備試験や司法試験では、裁判例を題材(元ネタ)の一部とした出題が散見されます。

そこで、重要判例解説や商事法務掲載の解説などを参考に、各種試験との関係で重要な裁判例をピックアップし、要点を分かりやすく解説していきたいと思います。

「最近の判例」の基準としては、会社法判例百選第3版に掲載されていない判例を念頭においています。

   

 

第13回となる今回の判例は、東京高判令和元年10月17日法人株主の使用人が株主総会会場に入場したとしても、事前の書面による議決権行使が撤回されたものと認めることができないとされるなど、株主総会をめぐる諸問題について重要な判断を示した事例)です。

 

 

(事案の概要)

 

平成30年6月5日、東証1部上場のY社は、取締役7名選任を議題とし、A1~A6およびX1を取締役とすることを議案(以下「本件会社提案」という)とする、同月21日開催の定時株主総会(以下「本件総会」という)の招集通知を発した。

Y社の取引先を会員とする持株会(以下「本件持株会」という)では、会員に対し、本件会社提案について特別の指示を与える場合は同月20日までに知らせるべきこと、賛成の場合は連絡の必要がないことなどが通知されたが、特別の通知をする会員はいなかった。同月15日、本件持株会は、本件会社提案に賛成の議決権行使を電子投票により行った。

同月11日、Y社の株主であるQ銀行は本件会社提案に賛成する旨の議決権行使書面を送付した。

本件総会当日、Q銀行担当者Mは、自社の発言票を受け取って会場に入場した。本件総会では、本件持株会の理事長であるPがA1~A3おおよびB1~B3を取締役に選任する旨の修正動議(以下「本件修正動議」という)を提出したため、本件会社提案と本件修正動議について、議場閉鎖の上、投票することとなった。

Pは本件持株会の保有する議決権につき、X1、A4~A6につき反対、本件修正動議に賛成の投票を行った。

Q銀行の担当者は、Y社担当者に対し、傍聴に来ているだけである旨説明し、何も記載せずに投票用紙を渡した。本件総会は、会場を移して継続され、動議によりA1に交代して議長に就任したRにより、本件修正動議が可決された旨の発言がなされた(以下「本件決議」という)。

Y社の株主であるX1~X3は、本件会社提案が可決されたなどとして、X1およびA4~A6がY社の取締役の地位を有すること確認等を求めた。

 

(判旨)

 

(ⅰ)(株主の議決権行使に係る有効性の判断に関して、民法93条但書きあるいは無権代理の法理を適用すべきでないとするY社の主張に対して)

議決権の行使は,議案に対する株主の意見の表明であるから,厳密な意味で意思表示に当たるかどうかはともかくとして,意思表示に準じて考えるべきであって,議決権行使の有効性の判断について意思表示や代理等の民法の原則の適用を一般的に排除する理由はない。

→ Pによる議決権行使は、その権限を逸脱または濫用したものであり、Y社は当該議決権行使が会員の指示に反することにつき悪意であったと認定し、当該議決権行使を無効とした。

 

(ⅱ)「書面による議決権行使の制度は,株主の意思をできるだけ決議に反映させるために株主自身が株主総会に出席することなく議決権を行使できるよう設けられた制度であるところ,……Q銀行の担当者〔M〕は,本件総会会場に入場したが,同銀行から議決権行使の権限を授与されておらず,本件会社提案及び本件修正動議についての投票の際,Y社に対してその旨を説明しており,Y社においても同銀行が議決権行使書と異なる内容で議決権を行使する意思を有していないことは明らかであったといえる。このような状況においては,上記のような書面による議決権行使の制度の趣旨に鑑み,会社において確認している株主の意思に従って議決権の行使を認めるべきであるから,投票による本件会社提案及び本件修正動議について欠席として扱い,事前に送付されていた議決権行使書に示されたQ銀行の意思に従って,本件会社提案に賛成,本件修正動議に反対として扱うのが相当である。」

Mは,議決権の行使について何らの権限を授与されておらず,傍聴者として本件総会会場に入場したのであり,職務代行者として入場したとは認められないから,Mが本件総会会場に入場したことや投票前に議場を退場しなかったことをもって,事前の書面による議決権の行使が撤回されたものと認めることはできない。

「Q銀行の議決権の行使については,議決権行使書のとおり,本件会社提案に賛成,本件修正動議に反対として扱われるべきである」

 

(ⅲ)「株主総会の決議は,定款に別段の定めがない限り,その議案に対する賛成の議決権数が決議に必要な数に達したことが明白になった時に成立するものと解すべきであって,必ずしも,挙手・起立・投票などの採決の手続をとることを要するものではない(最高裁判所昭和42年7月25日第3小法廷判決・民集21巻6号1669頁)。したがって,投票という表決手続を採った場合も含めて,議長の宣言は決議の成立要件ではなく,決議は,会社が株主の投票を集計し,決議結果を認識し得る状態となった時点で成立すると解すべきである。なぜなら,そのように解さないと,……正しい集計結果によれば可決されるべき場合でありながら議長が否決を宣言した場合には,否決の決議には決議取消訴訟を提起できないため違法な状態を是正する手段がないことになるし,また,本件における本件会社提案と本件修正動議のように二者択一の提案がされている場合において,議長が一方の提案が可決された旨宣言したが,同決議が決議取消訴訟において取り消された場合,他方の決議について,上記訴訟において決議の成立要件を充足していることが確認されているにもかかわらず,議長の宣言がないから成立していないと解さざるを得ないという不当な結論になるからである。……本件会社提案のうち,X1らを取締役に選任する旨の決議は,前記のとおり決議の成立要件を満たすことからすれば……,同議案を可決する決議が成立したと認められる。」

 

 

(解説)

① 判旨(ⅰ)について

判旨(ⅰ)は、議決権行使の有効性の判断について意思表示や代理等の民法の原則が一般的に適用されることを公刊裁判例として初めて示したものとして、重要です。

そのうえで、本判決は、Pによる議決権行使は、その権限を逸脱または濫用したものであり、Y社は当該議決権行使が会員の指示に反することにつき悪意であったと認定し、当該議決権行使を無効としました。

このような処理は有力な学説と整合的です(山本爲三郎「委任状勧誘をめぐる法的諸問題」浜田道代=岩原紳作編『会社法の争点』(有斐閣、2009)105頁、田中亘「株主総会における議決権行使・委任状勧誘」岩原紳作=小松岳志『会社法施行5年 理論と実務の現状と課題』(有斐閣、2011)11頁参照)。

他方、反対説として、委任関係上の内部的な義務違反にすぎず、議決権行使自体は有効であるとする見解もありましたが(酒巻俊雄=龍田節編集代表『逐条解説会社法4』(中央経済社、2008)149頁〔浜田道代〕、荒谷裕子「委任状による議決権行使」浜田=岩原編・前掲書107頁等)、本判決を契機に、この見解の影響力は弱まりそうです。

 

②判旨(ⅱ)について

従来は書面投票をした株主が総会に出席すれば書面投票は効力を失うという見解が一般的であした。これに対して、判旨(ⅱ)は、株主の使用人が職務代行者ではなく傍聴者として出席した場合には、書面投票が撤回されたものと認めることはできないとした点で注目に値します。

本件を契機として、株主・職務代行者の出席によって事前の書面投票が撤回されるとする従来の考え方も見直されるべきであるの意見も出ています(後掲・北村、弥永)。

 

判旨(ⅲ)は、昭和42年の最判を引用した上で、「議長の宣言は決議の成立要件ではなく,決議は、会社が株主の投票を集計し,決議結果を認識し得る状態となった時点で成立する」と判示しました。

 

本件においては、「決議結果を認識し得る状態となった時点」が具体的にどの時点であるかは明確でなく、そのような状態が存在したかも疑問であるとされます(後掲・弥永、伊藤)。また、議長による決議の宣言と同視しうるような客観的に明白な状況がないにもかかわらず、決議の成立を認めるならば、会社関係者間で決議の存否について意見が分かれるという批判もあります(後掲・伊藤)。

このように、事実認定・あてはめに関して批判はありますが、判旨(ⅲ)の規範自体は、 妥当と解されます。

 

 

 

(参考文献)

弥永真生「本件判批」ジュリ1543号(2020)3頁

伊藤雄司「本件判批」法教474号(2020)125頁

川島いづみ「本件判批」ひろば73巻6号(2020)

北村雅史「事前の議決権行使と株主総会への『出席』の意味――東京高判令和元年10月17日を手がかりとして」商事法務2231号(2020)

 

 

今回の記事は以上です。

少しでもみなさんの参考になれば幸いです!!

それではまた!!!

  

 

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