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会社法判例百選第4版で追加された判例15件のまとめ

 

こんにちは、コポローです。

会社法判例百選第4版が刊行されました!

第3版から5年が経っており、15件の新判例が追加されました(判例の差替えを含みます)。

 

 

 

そこで、今回は、第3版から追加された判例15件を簡単に紹介します。

追加された判例の多くは、本ブログで過去に解説しておりますので、その解説記事も併せて紹介させていただきます。

本ブログでまだ解説していない判例で各種試験において重要なものについては、随時、解説していきたいと思います。

 

   

 

第4版で新たに追加された判例は下記のとおりです。

 

28事件「株主提案権の濫用」

東京高判平成27年5月19日

(※第3版31事件・東京高判平成24年5月31日から差替え)

解説は酒井太郎(一橋大教授)

 

→本判例HOYA事件として有名な判例で、株主提案権の行使が権利濫用に当たると認定した初めての裁判例です。

事例判断で、一般論は述べていないため、本ブログでも解説しておりません。百選4版の解説でも、令和元年会社法改正の際の議論を含め、学説の議論について紙面が割かれています。

 

なお、令和元年会社法改正における株主提案権制度の改正については下記記事で解説しています。

kaishahou.hatenablog.jp

 

 

35事件「議案を否決する株主総会決議の取消し」

最判平成28年3月4日

解説は高橋陽一(京都大准教授)

 

→本判決については本ブログでも解説しています。

kaishahou.hatenablog.jp

 

 

41事件「株主総会決議により代表取締役を選定する旨の定款の効力」

最決平成29年2月21日

解説は三宅新(北海道大准教授)

 

→本判例についても本ブログで解説しています。

kaishahou.hatenablog.jp

 

 

78事件「退社した無限責任社員の負担すべき損失の額」

最判令和元年12月24日

解説は荒達也(九州大准教授)

 

持分会社は試験にほとんど出ないため、本ブログでは解説していません。

本判決の要点は以下の通りです。

持分会社の社員が退社する場合、持分の計算が行われ(会社法611条2項)、退社する社員が積極持分(プラスの持分)を有する場合は払戻しを受けることができる(同条1項)。他方、退社する社員が消極持分(マイナスの持分)を有する無限責任社員である場合は、明文の定めはないが、通説によれば、会社にこれを払い込む債務を負うと解されている。本判決は、最高裁として初めて、通説と同旨の判示をした。

 

念のため、最高裁の判決文も掲載しておきます↓↓

無限責任社員合資会社を退社した場合には,退社の時における当該会社の財産の状況に従って当該社員と当該会社との間の計算がされ(会社法611条2項),その結果,当該社員が負担すべき損失の額が当該社員の出資の価額を下回るときには,当該社員は,その持分の払戻しを受けることができる(同条1項)。一方,上記計算がされた結果,当該社員が負担すべき損失の額が当該社員の出資の価額を超えるときには,定款に別段の定めがあるなどの特段の事情のない限り,当該社員は,当該会社に対してその超過額を支払わなければならないと解するのが相当である。このように解することが,合資会社の設立及び存続のために無限責任社員の存在が必要とされていること(同法576条3項,638条2項2号,639条2項),各社員の出資の価額に応じた割合等により損益を各社員に分配するものとされていること(同法622条)などの合資会社の制度の仕組みに沿い,合資会社の社員間の公平にもかなうというべきである。」

 

 

83事件「株式売渡請求にかかる価格決定申立てができる株主の範囲」

最決平成29年8月30日

解説は伊藤吉洋(関西大学准教授)

 

→本判例は本ブログで解説しております。

kaishahou.hatenablog.jp

 

 

90事件「吸収分割承継会社が承継する債務の範囲」

最決平成29年12月19日

解説は原弘明(関西大学教授)

 

→本判例も下記記事で解説しております。

kaishahou.hatenablog.jp

 

 

93事件「株式会社の解散判決における業務執行上の著しい難局」

東京地判平成28年2月1日

(※第3版95事件・東京地判平成元年7月18日から差替え)

解説は宍戸善一(武蔵野大教授)

 

→公刊判例集未掲載の判例であることもあり、本ブログでは紹介していません。(試験にも出にくいテーマです。)

 

 

Appendix2事件「振替株式の共同相続」

最決平成31年1月23日

解説は脇田将典(金沢大学講師)

 

→主として、民事執行法の問題が扱われており、本ブログでは紹介しませんでした。

評釈も、民訴学者の者が多いです。

判例は、次の4点を判示しています。

①振替株式は相続開始とともに当然に相続人に承継される。

②口座開設者としての地位も相続人に相続される。

③よって名義が異なっていても振替株式の共有持分を差押さえることは可能。

④当該共有持分の譲渡命令も可能。

 

 

Appendix9事件「株主総会への『出席』と書面投票の効力、株主総会決議の成立時期」

東京高判令和元年10月17日

解説は行岡睦彦(神戸大准教授)

 

→本判例については下記記事で解説しています。

kaishahou.hatenablog.jp

 

 

Appendix14事件「役員選任決議取消しの訴え――役員退任の場合に訴えの利益が認められる場合」

最判令和2年9月3日

解説は行岡睦彦(神戸大准教授)

 

→本判例についても本ブログで解説しています。

kaishahou.hatenablog.jp

 

 

Appendix16事件「正当理由のない取締役の解任と損害賠償」

東京地判平成27年6月29日

解説は南健悟(日本大学教授)

 

→本判例は本ブログで紹介していません。

判例は、任期を短縮する定款変更により任期満了で退任する取締役に会社法339条2項の類推適用を認めたものです。

最近の類似判例として、名古屋地判令和元年10月31日金判1588号36頁があります(解説として、伊藤雄司・法教478号138頁、仲卓真・私法判例リマークス62号88頁参照)。

 

 

Appendix17事件「特別利害関係人が参加した決議の効力」

最判平成28年1月22日

解説は温笑侗(東北大学教授)

 

→漁業協同組合の事件ですが、会社法369条2項(利害関係取締役の議決権排除規定)と同様の規定の解釈が問題となっており、会社法369条2項にもその射程が及ぶと考えられています。

本判決は、特別利害関係を有する理事が加わった理事会決議であっても、当該理事を除外してもなお必要な多数が存するときは当該決議の効力は否定されないと判示しています。

 

判決文の要旨は下記の通りです。

水産業協同組合法37条2項が,漁業協同組合の理事会の議決について特別の利害関係を有する理事が議決に加わることはできない旨を定めているのは,理事会の議決の公正を図り,漁業協同組合の利益を保護するためであると解されるから,漁業協同組合の理事会において,議決について特別の利害関係を有する理事が議決権を行使した場合であっても,その議決権の行使により議決の結果に変動が生ずることがないときは,そのことをもって,議決の効力が失われるものではないというべきである。

 そうすると,漁業協同組合の理事会の議決が,当該議決について特別の利害関係を有する理事が加わってされたものであっても,当該理事を除外してもなお議決の成立に必要な多数が存するときは,その効力は否定されるものではないと解するのが相当である最高裁昭和54年2月23日第二小法廷判決・民集33巻1号125頁参照)。」

 

 

Appendix33事件「資本減少における債権者を害するおそれ」

阪高判平成29年4月27日

解説は温笑侗(東北大学教授)

 

→本判例については下記記事で解説しています。

kaishahou.hatenablog.jp

 

 

Appendix34事件「新株予約権社債の有利発行」

東京高判令和元年7月17日

(※第3版A32事件・東京地決平成19年11月12日から差替え)

解説は永江亘(南山大学准教授)

 

新株予約権社債の価値について、新株予約権の価値と社債の価値とに分離して評価するという、従来の裁判例(3版A32事件参照)を踏襲するものです。

また、ブックビルディングを経たことをもって「客観的な資料に基づく一応合理的な算定方法」による決定であると認定した点も注目されます。

 

 

Appendix35事件「社債に対する利息制限法の適用」

最判令和3年1月26日

解説は永江亘(南山大学准教授)

 

→本判例については下記記事で解説しています。

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Appendix36事件「サムライ債の債券管理者の原告適格

最判平成28年6月2日

解説は行岡睦彦(神戸大学准教授)

 

→外国が日本で発行した円建て債券の債券管理会社が、当該債券の償還等請求訴訟において、任意的訴訟担当として原告適格を有することを認めた判例です。

基本的に民事訴訟法の問題なので本ブログでは解説していません。評釈類も民訴法学者によるものが多いです。

 

 

Appendix41事件「公募増資と不公正発行」

東京高決平成29年7月19日

解説は永江亘(南山大学准教授)

 

→出光興産事件です。本判例については下記記事で解説しています。

kaishahou.hatenablog.jp

 

 

今回の記事は以上です。

百選第4版では、令和元年会社法改正や他の新しい裁判例も踏まえて解説もアップデートされていますので、購入をおすすめします!

 

 

 

 

※以下では、おまけとして、おすすめの会社法の教科書・演習書等を紹介します。

 

〇最もおすすめの教科書。わかりやすい上に、執筆者は司法試験・予備試験の考査委員。 

 

 

〇中級者~上級者のための辞書です。実務に出てからも重宝します。

 

 

 〇田中亘先生の教科書(中級者以上におすすめ)。先端的です。

 

 

 〇令和元年会社法改正の理解に最適です。

 

 

〇商法総則・商行為の教科書としてはこちらがおすすめ。平易で分かりやすいです。

 

 

〇中堅研究者が会社法判例について的確に解説しています。

 

 

〇演習書として最適です。重要論点の多くがカバーできます。

なお、解答例が載ってないのが弱点ですが、本ブログにて解答例を紹介しています↓↓

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〇商法全体の重要判例がカバーできます。

掲載判例が多く、あてはめまで載っているものが多いです。